大森林の中はその広さと複雑な地形から、大部隊での侵攻は難しいとされていた。それは結果的に、この森を3国に囲まれながら小競り合い程度しか行われない奇妙な中立地帯にしていた。騎士見習いが経験を積むには丁度いい場所であろう。
トゥリーネがそんな事を考えていた時、それは不意に目の前に現れた。いや、正確には『それ』ではなかったのだが、考えるよりも先に体が反応していた。気付いた時はプラチナ・ウルフはその小柄な『少女』の体を掴んでいた。
「θヽξ!ηζゞ!」
少女は意味不明な言葉を叫びながら必死にもがくが、巨大なガーディアンに対してそれは何の意味も成さなかった。
「・・・・・この娘?・・・・・蛮族か?・・・・・」
鮮やかな緑色の髪に聞きなれない言葉、体の各所には化粧なのか赤や白の線が引かれている。
かつては大陸全土に繁栄していたという先住民、ゼムート族。だが、今ではその名も人々の記憶から消え去ろうとしていた。
「こんな所に、まだ生き残りがいたのか・・・・・」
そうトゥリーネが呟いた瞬間、目の前を闇が覆った。
ガギィィィッ!!
トゥリーネは一瞬何が起こったのか理解できなかった。
機体に衝撃が走ったかと思うとプラチナ・ウルフの左腕が肘からなくなっていた。カイレル皇国でも最高のナイト・ガーディアンの腕がである。
まるで爪で削り取られたかのような傷跡と、地面に転がった自分の機体の左腕。驚くトゥリーネの視線の先にそれはいた。
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