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「ジュリア様」
まるでダンスホールのような広々とした部屋に二つの人影があった。
一人はジュリアと呼ばれた女性。透き通るような白い肌に真紅のドレスを纏った妖艶な美女である。濡れたようなその唇にはうっすらと笑みを浮かべている。
もう一人は彼女とは対称的に浅黒い肌の持ち主で、その体をぴったりとした白い服で包み、まるでジュリアの影であるかの様に彼女の傍に佇んでいる。大広間に他に人影はなく、ステンドグラス越しの光が二人を包んでいる。
「テレサ、言ったでしょう・・・・・二人だけの時はジュリアでいいわよ・・・・・」
「はい、ジュリア様」
いつもの返答にジュリアは苦笑をもらす。この呼び方だけは、頑なに変えようとしない。
彼女に対して常に忠実であるテレサの唯一譲らない所である。
「で・・・・・どうしたの・・・・・?」
「カイ王国のキンメル将軍から、会談の招集です。恐らくはカイレル皇国への全面攻勢についての各国への協力の要請かと思われます」
「・・・・・まったく・・・・・血の気の多い事・・・・・」
半分予想済みであったのか、ジュリアはテレサの報告につまらなそうにつぶやく。
「そんなに戦がしたいのかしら・・・・・」 |
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